「よし。これはいい。」
と、思わず王さまがうなずいた。
「では、おまえに牛百頭をあたえよう。そこのかこいに入れてある。あれだ。あの牛を、ずっと遠くの旗の立っているかこいの中まで運んで行け。」
彦がこちらのかこいの牛のところに行くと、百頭の牛はたくましくて気が荒い。鼻息をフウフウはいて、足で土をけっている。彦はおそろしくてふるえた。すると、アカが、
「クウ、クウ、クウ。」
と、やさしくないた。
「クウ、クウ、クウ、クウ。」
牛たちの目がとてもやさしくなった。首をゆっくり動かしてうなずいている。ほっとして、彦はかこいの入口をあけた。
牛が外に出る。アカが牛のまわりを勢いよく走りまわる。よくしなう木の枝を子どもが彦にわたした。彦はそれを頭の上でふりながら遠くのかこいの旗にむかって歩いていく。後を百頭の牛がかたまって進んだ。
王さまはじめ見ているものみんなが目を丸くしていた。
牛百頭はおとなしく旗の立ったかこいの中におさまった。
もどってくる彦の体に汗の玉がうき出て、たくましく美しい。そのよこを歩くアカの毛がキラキラとまぶしく光っていた。


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