天の川をさかのぼった男と宝満川をさかのぼってきた男 七夕ぼん-おごおり探検隊

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26.jpg四日目に、はたと、風が止んだ。雨も止んだ。見上げる夜の空一面に星が出ていた。
「おお、天(あま)の川(かわ)だ。」
 柳青(りゅうせい)は声をあげた。
「あれは、織女星(しょくじょせい)。あれが、牽牛星(けんぎゅせい)。」
 青白く、そして白く光る大きな星が、なつかしく、柳青の心にしみた。
「ああ、七夕(たなばた)の星たちよ。わたしをどこかの土に着けてください。」
 心の底から星に祈った。
 夜が明けてまわりが見えた。島一つ、岩一つ、見えない、海のまっただなか。
 ところが船が動いていた。川の流れにのっているように海の流れにのって動いていた。早く、早く、柳青はかくごをきめて、雨水のたまったのをのみながら、海上を流れていた。
 海の上に黒い点が見える。それが大きくなった。あ、山だ。陸地だと思ううちに広い入江にはいったらしい。満(み)ち潮(しお)が船を押すのかどうか、よくわからない。あたりの景色もぼうっとしてわからないうちに、船だけが進んで行く。大きな川をさかのぼっているようだ。いつのまにか小さな川にはいってさかのぼっているらしい。なんでもがぼんやりした中で、船が止まった。
 船は川の岸の砂にのりあげていた。
 柳青は船からおりた。川の水をすくってのんだ。体にしみとおる。砂の中に貝ををみつけて、石でくだいて食べた。岸の草の根をかんだ。甘くてにがい。緑の草の中にねころんだ。小鳥の声がしていた。
「生きている。たしかにわたしは生きている。」
 美しい青い空。深く息をすいこんだ。
 川の土手にあがると、稲(いね)をうえた田が広がっていた。桑(くわ)の畑もあった。家などのようすは自分のふるさとの唐(とう)とはちがっているが、なんとなく似ていてなつかしい。
 家に近づくと、中から、トン、カラリ、トン、カラリと、機(はた)を織(お)る音がした。どの家からも音がしていて、のぞいてみると、それぞれに女が機(はた)で布(ぬの)を織(お)っていた。